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鳴るほど♪楽器解体全書
ティンパニ第2回
ティンパニの音の原理
 
なぜ音程がつくれるか
なぜ音程がつくれるか

ティンパニはドレミの音がちゃんと出せます。同じ太鼓でもドラムは音程がつくれないのに、ふしぎですね。その理由を設計担当の井上秀行(いのうえひでゆき)さんに教えてもらうのが今回の主題。ヘッド(膜)やケトル(胴)の動きについても聞いてみます!

このページに掲載されている情報は2005年5月現在のものです。
TOPICS
丸底だから 【音程がつくれる理由】
どこを叩(たた)くかは重要 【ヘッドの変動】
音の実験をしてみました 【なんとも大胆!】
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  丸底だから
 
井上秀行さん写真
井上 秀行さん
ティンパニはシンプルな構造に見えてとても奥の深い楽器、とのこと

♪ティンパニは音程がつくれて、ドラムがつくれないのはなぜ?

「それは構造の違いです。ドラムは円筒型で裏表2枚のヘッドがあり、表のヘッドを叩いた時の振動は裏のヘッドに当たって、表裏と往復するうちに様々に変化します。振動の変化が多彩で、安定した音程は出せないんです」

♪ドラムは振動が安定しない

「一方、ティンパニは底がフタをされていて、しかも丸底。これがきちんと決まった高さの音、楽音(がくおん)をつくれる鍵となります。丸いケトルの中に閉じ込められた空気がドラムの場合のような複雑な振動を妨げ、規律の正しい整数倍の膜振動が得られやすくなると言われています」
  振動イメージ
 

♪円筒と丸底の違い、密閉されているかどうかの違いなんですね

「密閉については少し補足があります。実は、ティンパニの底にはちっちゃな穴が開いてるんです。この穴が小さいと音がよく伸び、穴が大きいと音の伸びが短くなって叩いた時のタッチが軽くなります。穴の下に手を入れると、空気が抜けるのがわかりますよ」

♪どれどれ・・・叩いた時にフッと空気が当たります!

ケトルの底の穴
ケトルの底の穴
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  どこを叩くかは重要
 
▲【叩く位置と音】を視聴するためには、最新のフラッシュプレーヤーが必要です。

♪あれ、真ん中を叩いてないんですね

「そうなんです、手前の縁(ふち)の方を叩きます。ヘッド全体は中央を左右に通る直線を節(ふし)にして波打っていて、縁は振動の腹の部分に当たります」

振動の腹と節、マリンバの回にも出てきました!

「同じ有音程打楽器ですからね。叩く位置によって音の高さは変わりませんが、出る倍音の構成が変わるので音色が変わります。腹を叩くと一番低い基音がしっかり鳴って大きく豊かな音色になり、整理された振動が出ます。節を叩くと基音より倍音の方が目立って音は濁りますが高く聴こえます。楽譜の指示で稀(まれ)にど真ん中を叩くこともあるんですよ、音はほとんど伸びませんが。ちょっと聴き比べてみてください」
 

♪確かに、叩く位置で音色がずいぶん違います

「腹を叩いている時のヘッドの変動を上から表すと、こんなイメージです。白い所がへこんで黒い所がふくらみ、次の瞬間には凸凹が逆になり、また逆になり、と面全体が波打っています。もちろん目で見てわかるレベルではありませんが・・・。他にもヘッドの変動にはいろいろあって、ヘッドのテンション(張力)や叩く場所によって変化します」

♪実験でぜひ確かめてみたいです!

ヘッドの変動イメージ
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    音の実験をしてみました
ケトルが丸底である理由、ヘッドが目に見えない速さで振動していることなどがわかりました。そこで大胆にケトルをカットする実験も含めて、ティンパニの音の原理にさらに迫ってみます!
丸底のあるなし実験
ケトルとドラムの違いは丸底があるかないか、だよね
確かにそうね
じゃあ、丸底を切ってみたらどうなるかな?
考えてもみなかったわ!
実験の手順
【1】 ティンパニを叩いて音を聴く
【2】 ケトルの丸底を電動ノコギリで切る
【3】 【2】をセットしてヘッドを張り、音を聴く
【4】 ヘッドを外してケトルを外し、切った丸底部分を反転させてくっつける
【5】 【4】をセットしてヘッドを張り、音を聴く
実験
 
実験の結果
丸底の時(通常) 丸底を切った時 切った丸底を反転させた時
丸底の時(通常) 丸底を切った時 切った丸底を反転させた時
実験の結果を聴くためには、最新のフラッシュプレーヤーが必要です。
※ 実験による録音のため正しい音程と異なっております。
♪丸底部分を切って鳴らしてみると、音量がすごく増してやかましいほどに。音はドスドスドスッという、雷が近くで鳴っているような感じになり、あまりの変化に驚きました。底がなくなると音がズドンと抜けて行くようです。
次に、切った丸底を上下逆にして、ガムテープで周囲をぐるりとくっつけて鳴らしてみました。音程がはっきりわからない、ぼわんぼわんとした音になり、見た目とそっくりの不思議なイメージの音でした。
ちなみに、ガムテープはちょっとでも浮いているとビリビリ振動して雑音になってしまうので、なるべくきっちりと貼(は)りました。
井上秀行さん写真
「音程をはっきり出すためには、丸い底のケトルの中の空気が閉じ込められているところにポイントがあります。丸底を切ったものは、空気が閉じ込められていない状態になっていますので、ドラムのような音が混じって、結果的に爆発的に大きな音が鳴っています。理論上、振動の波は、空気がある状態よりも真空の方が持続しやすく、むしろ空気は振動の持続に抵抗を生む働きをするそうです。丸底があるものとないものでは、空気の挙動がずいぶんと音色に影響を与えているようですね。余談ですが、丸底を切った状態の低音は、ゴングバスドラムの音とよく似ています。木の胴の片側にティンパニの皮を張ったバスドラムで、上から吊って叩く無音程楽器です。
切った丸底を合わせた時の音は、非常に複雑な音になりました。2つの音が邪魔し合っているように聴こえますね」
 
ヘッドの変動を目で見る実験
ヘッドに細かい物を載せたらどうなるかしら
どんなふうに動くかな
試してみましょう!
実験の手順
【1】 色砂を用意する
【2】 ヘッドの上に薄く載せる
【3】 ヘッドを叩きながら観察する
実験の結果
実験の結果を視聴するためには、最新のフラッシュプレーヤーが必要です。
※ 実験による録音のため正しい音程と異なっております。
♪ヘッドを叩くと色砂がパアッと上に飛び上がり、空中に山ができました。叩いている反対側には高い山、叩いている側には低い山が現れます。叩くとまず高い山ができ、少しだけ遅れて低い山ができました。見ていておもしろい!!
砂は最初にまんべんなく載せなくても、叩いているうちに広がっていき、独特の形になりました。ヘッドを水平にすると重力で砂が偏らず、ヘッドの振動に応じてさまざまな模様ができました。
井上秀行さん写真
「ヘッドを叩くと反対側がふくらみ、その後、手前がふくらむことが、緑の砂の動きでよくわかりますね。山の高さは膜の振動の強弱を表していて、振動が強いほど山が高くなっているんですよ。ティンパニの膜が振動の節で分割され、単純に振動していることがよくわかります」
ヘッドにテープを貼(は)る実験
ヘッドは中央の線で振動が逆になるよね
テープを貼ってその振動を邪魔したら?
音に変化があるかも
実験の手順
【1】 ヘッドの中央に1本テープを貼って音を聴く
  【2】 テープを貼る位置や形を変えて音を聴く
実験の結果
貼っていない時(通常) 横1本の時 6分割の時
貼っていない時(通常) 横1本の時 6分割の時
横1本と円の時 12分割の時 横4本の時
横1本と円の時 12分割の時 横4本の時
実験の結果を聴くためには、最新のフラッシュプレーヤーが必要です。
※ 実験による録音のため正しい音程と異なっております。
♪【横1本の時】は音にはほとんど変化なし。さらに2本貼った【6分割の時】は、詰まったような音がして、強くはじかれるような手応えに変わりました。続いて、【横1本と円の時】は通常よりも落ち着いた音に。【12分割の時】は叩いた感触もすごく硬くて、音も詰まった印象になりました。最後の、半円部分に4本貼った【横4本の時】にはティンパニなのに和太鼓のような音に聴こえました。
「ヘッドの上にテープを貼ると、手や物を載せた時と同様、いくらか音がミュート(消音)されます。【横1本の時】はほとんど振動しない節に貼っているので、音にあまり影響はありません。【6分割の時】はドラム的な感じでマレットの跳ね返りが均等になり、音の粒が揃いやすくなりましたね。実はティンパニは打ち方で音の強弱や音色がすぐ変わってしまうので、粒ぞろいの音を出すのは難しいんですが、これなら簡単に出せます。【横1本と円の時】はティンパニらしい響きが出ています。また、【12分割の時】のようにすると、分割した量とピッチが合っていないせいか、ティンパニらしい音にはならず、ミュートされたような短い音になりました。マレットの反発はさらに強くなり、ドラムのような複雑な音に聞こえました。【横4本の時】は反対側の膜の変動を止めている状態。端っこを叩いているのに、まるでヘッドの真ん中近くを叩いているような音ですね」
井上秀行さん写真
  ケトルは丸底があることで
コントロールされた温かくて深い音が
鳴るんだなあと感心しました。
ヘッドの振動を目で見えるようにした
色砂の実験はとてもおもしろかったです!
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